一瞬、時が止まったような気がした。 風ばかりが吹いて、おかしいくらいに静かで。 亜実は、微笑んだ。 きれいに、怖いくらいきれいに微笑んだ。 『ありがとう』 それだけつぶやいた。 ありがとう、ってのは。 私も好きだという暗示なのだろうか。 「亜実、それは―――――?」 『ありがとう。でも』 強く、風が吹いて。 『ごめんね』