お母さんは、たくさんのファンに見守られて、
安らかに永遠の眠りについたのだ。


あんなに、優しかったお母さんが
なんでこんな簡単に命を奪われなければならないのだろう―...?

なんで――


ポロポロと自分の目から、しょっぱい雫が流れていく。


「お母さんっ、お母さんっ...!!!」


自分が、自分じゃなくなっていく。
床にしゃがみ込み、とんとんとと手で叩く。


「李紅。顔を上げなさい」


ふ、と声のある方え、顔を上げてみる。

あ。お父さん...


お父さんも泣いてたんだね...
めったに泣かないお父さんが...


しばらく沈黙が続いた後、お父さんがこう発した。

「李紅。この家で暮らすんだ。お父さんも、忙しいからお前の相手をしてやれん。ここは、お父さんの親友の家だ。もう話してあるから、いきなさい。」


は...?

なに、いってるの?


...でも、こうしたほうが、いいのかもしれない。

父は、こうみえても有名作家だ。


あたしがいると、集中できないのかもしれない。


よしっ...

「うん。分かった、行くね。」