「相手がアニキなら……ホントに諦めつくよ」
アニキには絶対に幸せになってもらいたい。なってもらわないと困る。
アニキには……借りっていうか、謝っても謝りきれないことがあるから。
『まー無理に整理つけることはないって。気まずいなら、しばらく私たちと話すのやめとく?』
「……いや。それはそれでなんかイヤだし」
『それでいいならいいけど、顔に出すようなら、つまみ出すからね?』
「ははっ、つまみ出すって」
福原らしい言葉に、思わず口元が緩んだ。
「とりあえず、明日はやめとく」
『ならお昼は別ね。じゃ、そろそろ眠いからいい?』
「あぁ。悪かったな、こんな時間に」
『何言ってんの。さくちゃんと私の仲でしょ? 前はこっちが聞いてもらったんだから、お互いさま。それじゃあねぇ~!』
お互いさまって言うか、今は世話になりっぱなしな気がするんだけどな。
話したおかげで、ちょっとだが気持ちが明るくなった。まだしばらくは落ち込むだろうが、アニキと市ノ瀬がたのしいならそれでいい。だから、それまで抱いていた思いを手放すことにした。
でも、市ノ瀬の変化が気になって。
まさか……あんなことをするなんて、思ってもなかった。