「ちょっと、驚いただけ、だから。――わ、私も独占したいな、なんて」
ここまで誰かを必要としたのは、初めてだと思う。
だから橘くんが言う独占したいという気持ちも、今なら理解できる。
「ホント……市ノ瀬はカワイイって」
ありがとうと耳元で囁かれ、私はまた、心臓を大きく高鳴らせていた。
「――そろそろ終わったぁ~?」
突然の声に驚いた私たちは、同時に声の方を向いていた。
「声かけても気付いてくれないし、二人の世界入っちゃってるしさぁ~」
「朔夜、オレが言ったとおりだろう? 彼女が出来れば、こーなるってな」
そこにいたのは、美緒と海さんの二人。
慌てて離れると、私は布団で顔を隠していた。
あ、あんな場面見られちゃうなんて……!
どこから見られていたのかは気になるけど、聞いたらもっと恥ずかしくなりそうだったから、聞くことは止めておいた。
「これでさくも、俺が美緒に夢中になるのが分かっただろう?」
「わ、分かったって! もう二人が何してても文句言わないから」
「それにしても紅葉、結構大胆なのね? 「独占したいな、なんて」とか言っちゃって!」
「い、言わないでよ! 恥ずかしいんだから……」
も、もう穴があったら入りたいよぉ。
それからみんなで雑談して、帰る最後まで、私と橘くんはからかわれっぱなしだった。
みんなと話した後は、すごく気分がよくて。
部屋のガラスに映った自分は、ここに来て、一番いい顔をしているようだった。