「付けたって……も、もしかしてっ」

「あぁ、バッチリとね」


 ニカッと笑う橘くんに、私は慌てて首筋を手鏡で確認した。するとそこには、確かにくっきりと赤いものがあって……今まで付けられたことがなかった私は、顔が一気に熱くなってしまった。


「こ、こんなの、って……」


 キスマークなんて生まれて初めてで、私はどう反応したらいいかわからなくなってしまった。


「も、もしかして……イヤ、だった?」


 私の雰囲気を察してか、気にする橘くん。それに私は違うからと言い、こんなことが初めてなのだと、なんとか伝えた。


「だ、だから……よく、わからなくて。うれしいって思うけど、どうしたらいいんだろうとか……ちょっと、軽く混乱しっ!」

「―――ごめん」


 ぎゅっと抱きしめ、謝罪の言葉を口にする橘くん。嫌ではないと伝えたものの、何も聞かずにしたことは、少なくとも悪いと思うからと、そんなことを言われた。


「ちょっと、調子にのり過ぎた。市ノ瀬といたら、すっごい独占したい気になって……こーやって、オレの彼女なんだって、見せ付けたくなった」


 ど、独占だなんて……。

 そんなふうに思ってくれているのが、少し心配だった。

 もしかしたら……これがいつか、狂気の独占に変わるんじゃないかって。



 でも……橘くんは、橘くんだから。



 絶対に大丈夫なんて保障はない。まだ心配はあるけど、橘くんは信じれるって、そんな確証にも似た自信が、私の中にあった。