『なんで着ないの!? 似合ってるんだから着なさい!』
嫌だ……だって、チクチクするのに。
用意されたのは、フリルが付いた可愛らしいワンピースと靴下。けれど、フリルの部分が肌に刺さるような感覚があり、着ることを拒絶すると、母は更に機嫌を悪くした。
『ほら、ハヤク着なさい! ママに逆らうの!?』
髪を鷲掴みにされ、無理やり立たされる。
こんなことをされるぐらいなら……もう、大人しく服を着た方がマシだ。
『ちゃんと笑うのよ?――なんなのその顔! ちゃんとしなさい!!』
初めて会った人と並んで写真を撮るよう言われ、私は思うように笑えないでいた。知らないおじさんに抱えられ、しかも、元々写真が苦手ということもあって、上手く笑えない私に、母をとてもはらを立てていた。
私の意思なんて……関係ない。
従わなければ叩かれ、髪を掴まれ、罵倒されて。
――そこに【私】という個人はなく。
母が必要とする、母のために動いてくれる者。
――いるのは【人形】という存在で。
空っぽの、がらんどうであることが求められた。