我慢……してる。





 手に力を込めてたり、どことなく表情が違うというのが、雰囲気で感じられた。


「…………橘くん」


 励ましとか、そんな言葉を言いたいわけじゃない。

 ただ、橘くんの言葉に答えたいのに、それ以上言葉が出てこなくて――頷くことで、待っていると返事をするしかできなかった。


「あと、一番前で見てくれよ?」


 そう言うと、橘くんはドレスを抱え、奥の部屋へこもって行った。



 きっと……間に合う、よね?

 どうか、この頑張りが報われますように……。



 握った手に力を込め、神様に祈った。


「――私たちは行こっか」


 ぽんっと肩に手を添えると、きっと大丈夫よと笑い、美緒は励ましてくれた。


「さくちゃんならやるって。――紅葉には、売り子やらなかった分おごってもらおうかなぁ~」


 相変わらず、美緒はいつもの調子で接してくれる。

 すぐに気分を切り替えられそうにないけど、少しずつ、不安な気持ちはやわらいでくれそうだった。

 ショーまでの時間、美緒がまだ模擬店を見てないこともあり、グラウンドに出てお店を幾つか巡った。よっぽどおなかが空いてたのか、さっそく焼きそばやお菓子をねだられて。私も食べたいし、どちから一つならってことで、焼きそばをおごった。