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久々の実家に帰れば、そこには予想しなかった客がいた。
茶の間のテーブルに顔を伏せてはいるが、それが誰なのかぐらいわからないオレじゃない。
でも、目の前の子があの子だって信じたくなくて。風邪をひかないようにと、顔を見ず毛布だけかけて家を出ようとした。
すると、気配を察したのか。手が動いたと思えば、ちょうど、毛布をかけたオレの手に、その子の手が触れた。
早く出ようって思ったのに……気が付けば、オレはその子の頭を撫でていた。
これが……夢ならいいのに。
数日後、あれは現実なんだと、一番考えたくない形で突き付けられた。
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夕方に目を覚ましたカレは、昼間の機嫌の悪さはどこへやら。今は至って普通で、借りてきたDVDを一緒に見ていた。
「この後、どうなるんだろうね?」
借りてきたのは、推理ものの映画。謎解きだけでなく、意外にもアクション的な要素も含んでいる作品だ。
集中しているせいか、カレは食い入るようにテレビを見ている。
別に、たくさん会話しながら見たいわけじゃないけど……たまには、ほんの少し見ている内容について話しながら見たいって思う時もあるけど、
「黙って見てろ。いっつもうるさいんだよ」
カレにとっては、それは邪魔でしかないみたい。
また……怒らせちゃったかなぁ。
せっかく機嫌が直ったのに、またしてもやらかしてしまった自分を責めた。
様子をうかがえば、あきらかに険しい表情になる純さんに、私は身を硬くした。
こうやって、相手が険悪な雰囲気を漂わせていると、他人より敏感に感じ取ってしまう。