ムチとムチって……、
「結局ムチだけじゃん。」
私はボソッと小さく呟いた。
そのとき……、
ガチャッ。
向かい側のドアが開いて、中から人が出てきた。
『ぁ。』
声が重なった。
「は、はじめまして。
綾の友達の森川千里です。」
「………。」
私が挨拶をすると、ピタッと固まった様子の弟くん。
「え、と……?」
「あ……、弟の南葵(ミナミアオイ)です。」
私が伺うように弟くんを見ると、
ハッとした様子で名乗ってくれた。
「あ、もしかして、騒がしかったらごめんなさい。」
私は再びペコリと頭を下げた。
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