〝ジオ〟


ミルは花畑に寝転んでいる


ジオの頭に花で作った冠をのせ

無邪気な笑顔で微笑む。


〝ミルは手先が器用だな〟


ジオは花冠をそっと持ち上げ

見つめ、ミルに微笑み返す。


〝ねぇ、もうすぐ

わたしの誕生日でしょ?

……その日はローズタウンで

お祝いしない?〟


ミルは照れながら言う。


ローズタウンは

村の近隣にある町。


二人は付き合い初めてから

まだこの村から

出たことがなかった。


デートと言えば

決まってこの花畑。


友人に冷やかされるのを嫌い

二人が付き合っていることを

ジオが秘密にしたがったせいだ。


〝うん。行こう。

二人でどこかに出かけるなんて

初めてだな。

オレ、馬を借りるから

馬で行こう〟



ジオは馬を借り

自分で作った馬具を装着して

後ろにミルを乗せて走る。


誕生日プレゼントは

ずいぶん前から用意していた。


〝ミル、誕生日おめでとう〟


〝ジオ……これって〟


プレゼントは花畑の合鍵だった。


〝ジオ、ありがとう。大好き!〟


ミルはジオにそっと口づけする。