村はずれの廃屋の教会。


いつ頃使われていたものかは

知らない。


蔦が絡んだ石造りの古い教会だ。


火事で燃えてしまったのか

屋根も床もない。


そんな建物に誰も寄り付かず

オレにとっては

絶好の場所だった。


オレは人目を盗んで

毎日ここへ通い

地下を掘った。



穴を掘るのに1年。



はしごや空気口を設置したり、

誰にも見つからないように

花畑の入口に

鍵つきの扉もつけた。



光の確保に2ヶ月。



地下は光が届かないから

炭坑で松明の代わりに

使われているヒカリゴケを

採ってきて繁殖させた。


ヒカリゴケは

水を1日1回与えれば光るし

繁殖も早い。



花を育てるのに約半年。



ヒカリゴケで洞穴が

明るくなってから

一面にお前が好きな花を植えた。


そんな地味で地道な作業を

2年間続け

秘密の花畑は完成した。



―すべてはお前のために。



ヤドリギ祭の日に告白して

万が一いい返事がもらえたら

連れてくるつもりだったのになぁ。