「どうして?

ぼくは殺そうとしたんだよ?

魔術師なんだよ?」


優しいヴァネッサにシェリは

戸惑う。


「弟がいたんだけど、3年前

病気で死んでしまって。

ちょうどあなたくらいだった。

生まれつき体が弱くて、

それでも気分のいいときは

大好きな幼なじみの女の子と

家で遊んで。

でも、内気だったから結局

告白できなかったんだけどね。

生きてればハーヴァルド

くらいの年齢かしら?」


ヴァネッサがハーヴァルドに

対して必要以上にお節介だった

事を皆、初めて理解した。


「弟がいなくなってから

両親が元気なくて。

シェリが来てくれたらまた

昔みたいに活力ある音楽を

奏でると思うわ。

魔術師なんて関係ない。

魔法を使わなければ

ただの人でしょ?

魔術師が嫌なら魔法使いに

なればいいのよ!

あたしの弟になるでしょ?」


ヴァネッサは手を

差し出して言う。


シェリはヴァネッサを見つめ、

不安ながらも震えた手で

ヴァネッサに手を伸ばした。


それは彼の少しの勇気だった。