「何かお悩みですか?」


ハーヴァルドは問いかけた。


「ちょっとね。

……心の取り戻しかたが

わからなくて」


フランは作り笑いをして言う。


「それはみんな同じです。

一人で抱え込まないで

みんなで考えましょう」


「……そうね」


ハーヴァルドの優しい言葉に

胸を痛める。


フランは誰にも究極魔法である

召喚魔法の事を言っていない。


彼女が不安なのは、

仮に心を取り戻したとしても

気を失っていた間に見た

家一軒ほどの巨大で怖そうな

獣とどう信頼関係を

築けばいいのか

わからないことだ。


「フランさん、湖がありますね」


少し先に湖を見つけて

ハーヴァルドが指をさす。


「あそこまで行きましょう」


フランは言い、二人は

ゆっくり歩いて向かった。