「どこに行くの?」

 車の助手席に座った明日香が訊いてきた。

 昼休みが終わる前に明日香に連絡した。

 約束を果たしたいから会って欲しいと伝えた。

「東京案内だよ。俺が知ってる一番いいところへ連れて行く」

「あたしが前の彼のところに戻れるぐらい?」

 達也は冗談でもそういうことは言って欲しくなかった。

 思わず黙りこんでしまう。

「冗談だって。今さら戻れるわけないじゃん」

 つまり、今でも戻りたいと思っているということではないかと思ったが、口に出す勇気はない。

「今日は何してたの?」

 達也は話題を変えた。

「適当にぶらぶらしてた。やっぱり、東京の人は冷たいね。店員さんなんて機械が喋ってるのかと思った」

「人が多いからね。そうやらないと回らないんだよ」

 車は人通りのない道を走っている。

 あまりきちんと舗装されていないので、車が何度も揺れた。

 そのまま二十分ほど走った。

 そして、車を止める。

 そこは、少し山を登ったところにある公園だった。

「ほら、着いたぞ」

 達也は明日香に車から降りるように促した。