「…やっぱり、速いわね…。」

女はかろうじて攻撃を避けたのだが、背中の服が衝撃で破れていた。



『何故分かった?』

「…匂いよ。」

『匂い…?』

「そう、私は風を操る。風があなたの、鬼の匂いを私に運んでくれた。だから私は攻撃を交わせたの。」


そう言った女は、たった今全速力で走ってきたと言わんばかりに疲労しきっていた。

一見、余裕のある言い方だが、女は今のサキの攻撃で少なからずダメージを受けているようだった。


ダメージを受けていなくても、こんな至近距離で完全ではないが鬼になったサキと居合わせているだけで、立っているのもやっとだろう。




『そうか…。じゃあその匂いとやらを分からなくさせてやる。』

オレはそう言って、目を閉じた。



時間はかけられない。


少しだけなら…力を開放しても大丈夫…。

じゃないと、勝てない。



オレは、オレの奥深くに眠る黒い塊に向かって意識を飛ばした。


どす黒く、熱い溶岩がうごめいているような、その塊に…。




意識が塊に触れた瞬間、物凄い勢いで体内を熱を帯びた何かが駆け巡った。

熱い。

内側から焼けていくような、凄まじい力…。



その途端、オレの意識は黒い塊に捕まり、身動きがとれなくなった…。



遠くでシュウの声が聞こえた気がした。