あたしはちょっと吐息を吐いた。
「今日あたしの家に来ない?二人に話したいことがあるんだ。途中まで久米も一緒だけど」
と、諦めたように言うと乃亜と梶は顔を見合わせた。
「でも梶は乃亜と一旦楠家に行って。裏の勝手口を開けるからそこから入って。二人とも絶対表の玄関から入ってきちゃダメ」
あたしは真剣なまなざしで二人を見ると、二人ともぎこちなく頷いた。
「ごめん、鬼頭さん待った??」
丁度久米が帰ってきて、あたしたちは揃って久米を見た。
「乃亜と梶、二人でおうちデートだって。途中まで一緒でいい?」
「え!?デー…」梶が言いかけたのを、乃亜が
「そうなの~♪急に決まっちゃって」と被せた。愛想笑いを浮かべながら、梶の肩に手なんか置いている。
さすが乃亜。機転を利かせて先回りをしてくれたみたい。
「余計なことは喋らないで」と言う乃亜の視線に、梶は口を噤んだ。
「そーなの?二人付き合ってるの!??」と久米が驚いたように目を丸める。
「そうなの~♪付き合いたて」
「でも梶田は……」久米は言いかけて、ちらりとあたしの方を見る。
「何?」あたしが不機嫌そうに返すと、久米はそれ以上何も言ってこなかった。
「帰ろ。日が暮れちゃう」
あたしが促すと、
「そうだね」と久米は爽やかに笑顔を浮かべた。
こいつがストーカーじゃなくても、こいつは何かある。
この笑顔の下に―――何か隠している。
そう思えてならない。