「春川さん」

「あっ…はい」

私は机の上に立てていた鏡を閉じ、

ビューラーを筆箱にしまいこむと、

担任の松井を見上げた。

「いいかしら?」

「はい」

「次の時間、自習になるから。

 春川さん委員長だから、監督よろしくね」

「わかりました…」

私が頷いたのを見ると、松井は教室を出て行った。

「理奈、次自習なの?」

松井が私のそばを離れると同時に、ブリッコの雪乃がやって来た。

脚太いくせにスカート短いんだから。

私は彼女の白い脚をちらりと見ると、すぐに笑顔を作ってみせた。

「うん。ラッキーだよね」

「え、じゃあさ、席替えしようよ」

はあ?

「どうして?」

「だって雪乃、あの席嫌だもん。

 隣、坂口くんなんだよ? まじありえない~っ」

坂口くんのほうが可哀想だよ。

うざいブリッコの隣なんだもん。

「そうだね。でもまだ1ヶ月も経ってないよ、この席」

「そうだけど…でも雪乃は無理なの!

 もっとおもしろい席に座りたーい」

「…」

じゃあ自分でどうにかしろよ。

周りの子に席替えしたいって頼めよ。

何でも他人任せにすんなよ。

私は困ったようにはにかんでみせる。

「仕方ないなあ。じゃあ…くじ引きでいい?」

「理奈、超大好き!」

まじうざい。