別れの曲を君に(短編)


伝えられなかった想い。


近くに在りすぎて、無くしてみるまで気付けなかった、想い。


もう、ピアノなんて止めてしまおうと思った。


あの時、自分がピアノの練習に行かなければ、綾は事故に遭わなかったかも知れない。


一緒に居れば、助けられたんじゃないのか。


後悔の念ばかりが募った。


結局、ピアノを止める事も出来ず、良平は音楽教師になり、そして、この母校に赴任が決まった。


その時、良平が感じたのは、思い出深いこの母校で教鞭を執れることの喜びと、それを上回る恐怖。


ここは、良平にとって、一番最良で最悪の場所でもあったから――。