別れの曲を君に(短編)


「綾、君が好きだよ。


誰よりも、大好きだった……。


なのに……、守ってあげられなくて、ごめんな……」


まさか――。


ピアノの旋律に乗って聞こえてくる、苦渋に満ちた絞り出すような『先生』の声を、綾は呆然と聞いていた。


先生の頬を月明かりに照らされた涙が、きらきらと伝い落ちるのを、じっと見詰める。


シャープな頬の輪郭。


彫りの深い顔立ち。


見詰める黒い瞳。


大人びてはいる。


でも、この人は、良平に『似ている』んじゃない。


この人は、良平だ。


そう思った瞬間、綾の脳裏にフラッシュバックする、強烈な記憶――。