扉を開けようとして、首を傾げた。

 あたし、あけたまま出なかったかしら?

 「あ。聖子。おはよ」

 30歳も年下の義弟は手をひらひらさせ、食べようと置いていたケーキにフォークをさした。

 彼の名前は望月 鴉孤(もちづき あこ)。私はカラスと呼んでいる。

 彼は幼いとき多重人格障害を患い、今もその体には複数の人格が居る。

 個別名があるらしいが、いちいち覚えられないのであたしは皆をカラスと呼ぶ。