ふわふわの特大もっぷちゃん人形。
それが所長室の真ん中に置かれた。
「淳一くん、危ないから下がっていたほうがいいわよ。
ゼン所長はあれでも柔道有段者なの」
「くそ親父クタバレーッ!」
強烈なかかと落としが、もっぷちゃんにはいる。
だけど、もっぷちゃんはやんわりと受け止めた。
「俺は、てめぇみたいな胡散臭い政治家にはなりたくねーんだよ!」
次々に決まる華麗な技をげんなりと見ながら、体中に疲労感が広がる。
「そのこと、親父に言えばいいじゃん。親子なんだからさ」
「善太郎は言えないわ。優しすぎるのよ」
もっぷちゃんが、大技抱え投げでボフと音をたてて床に転がる。
そこにすかさずゼンの押さえ込みが決まる。
さらに追い討ちをかけるように、顔面に強烈なパンチがはいる。
おい、それ反則だぞ?
「ふっ……ははは、優しいってかバカなんじゃねーの」
「そうかしら? 頭はいいんだけど」
回転技でもっぷちゃんが高く上がると、なでしこもびっくりの強烈なキック。
もっぷちゃんは、オフィス街が一望できる一枚ガラスにボフとぶつかり、くたびれた様子で落下した。
ハアハアと肩で呼吸を整えたアイツ。
ゆらりと歩いて大きな机に付属されているゆったりとした皮の椅子に座る。
そのまま椅子を回転させると、俺とユカリさんに背を向けた。
「めんどくさい奴」
「淳一くんは、いいじゃない? まだ付き合い短いんだから」
「そうだけど、これからの事考えると頭痛がしてきました」
「それも、そうね。ふふふ
淳一くんの席はそこだから」
ユカリさんが指差したのは、アイツのすぐ隣にある小さな机。


