そんな優しい言葉をかけてくれる直人さんにはお礼を言い、二階へと駆け上がろうとした。

 「ゆう!待て!」

 それなのに。早く二階に上がりたい。それなのに。

 階段下で仁王立ちしたお姉に呼び止められてしまった。

 メガネこそが知的さを演出するのよと年甲斐も無く言い張り、伊達メガネをかけるお姉は実際知的な脳をお持ちだ。

 そんなことはどうでもいい。

 仁王立ちの姉を見下ろし、私は急ぐ心をなるべく隠すように心がけて笑った。

 「お、お姉。ただいま。」

 「おかえり。帰ったらまず手洗いうがいしろ。」

 「後でするから!」

 じゃっ!と右手を軽く上げ先を急ごうとすると怒鳴られた。