【5】隣人の森

 元々、私は汚れきった弱い人間であった。
 私は研究という概念に逃げ込み、人の脆弱さや傲慢さに、目を背けて生きていた。自分さえ良ければそれで良い小人なのだ。自分の世界の中からさえ出なければ、誰にも迷惑が掛らない、全て許されると思っている類(たぐい)の人間なのだ。

 しかし、今の私は、森が運命共同体である。
 今更だが、私は身をもって、自然から学んだのだ。

 そんなある朝、ついに、森に訪問者たちが現れた。