「どうしてですか?」


「だって、それがクセになって、うっかり職場で“志穂さん”なんて言ったら大変でしょ?」


「別にいいんじゃないですか?」


「だーめ。もし私達の関係が会社にばれたら困るでしょ?」


「別に……。不倫じゃないんだし」


神林君が言った“不倫”の言葉にドキッとしながら、私はオーブンに食パンを一切れ放り込んだ。


「君は分かってないなあ。そんな噂が立ったら、恋人が出来ないでしょ?」