「志穂さん、しっかりしてください。もう大丈夫ですから……」


やがて志穂さんの呼吸は穏やかになり、虚ろな目を俺に向けた。


「祐樹……?」


可哀相に、喉をやられたらしく、志穂さんの声はかすれていた。


「そうです。俺です。生きてくれて、ありがとうございます」


「お、教えて、ほしい事が、あるの」


「何ですか? あ、そうですよね。俺は志穂さんの事、今でも好きです。愛してます。ショックを受けちゃったけど、もう大丈夫です。俺は志穂さんを、一生放しません!」


「ありがとう」


志穂さんは、それはそれは美しく、嬉しそうに微笑んだ。


「でも……」


「はい?」


「教えてほしいのは……」


「はあ?」


「車の色なの」


「えーっ?」