「志穂ちゃん、戻って二人に文句言おうよ?」


「え、どういう事?」


「ダディは探偵を雇って人のプライバシーを暴くなんて酷すぎるし、祐樹は志穂ちゃんをかばえないなんて最低だし、あの二人に文句言わないと気が済まないでしょ?」


「私はいい。それより、早く帰りたい。何だか、体の調子が……」


それは本当だった。

屋敷を飛び出す時から目眩がしていて、今では話すのも辛くなっていた。


「そう言えば志穂ちゃん、顔が蒼いよ。病院へ行こうか?」


「ううん、今日は日曜だし……。それより、家まで送ってくれない? 図々しいけど」


「オッケー。じゃあ、住所を教えて?」


アパートの住所を告げると、アリサはそれをカーナビにセットした。


「ナビをセットしたから、志穂ちゃんは横になってて?」


「ありがとう」


シートを倒して目をつぶると、眠りに引き込まれる直前に、祐樹の顔が目に浮かんだ。


私はその祐樹に向かい、“さようなら”と、別れを告げた。