「こちらでございます」


そう言いながら、執事さんがある部屋の扉を開いてくれた。


「爺や、本当にここ? ここって、仕事に使う部屋じゃないの?」


「わたくしも旦那様に確認したのですが、間違いなく、この部屋にお通しするように言われましたので……」


「そう? 分かった……」


「では、旦那様をお呼びして参ります」


と言って、執事さんは行ってしまった。


「こんな部屋でごめんなさい。もっとゆったりした応接間がいくつかあるのに、変だなあ」


「ううん、全然問題ないんじゃない?」


その部屋は、一言で言えば社長室みたいな部屋だった。


窓側に大きな机とひじ掛け椅子があり、部屋の中央には木製のテーブルがあり、それを挟んで3人掛けのソファーが2つ。


壁に時計と油絵が掛けられている以外は家具も装飾もなく、正にビジネスライクな感じのする部屋だった。