「あの話って?」


「うん、前に此処に連れて来てもらった後、スナックで祐樹が言ってくれた事……」


“プロポーズ”という言葉を口に出すのが恥ずかしくて、遠回しに私が言うと、祐樹はすぐにそれと解ってくれて、


「あっ。も、もちろん“有効”ですよ!」


と、私の方へ身を乗り出すようにして言った。


「よかった……」


私は思わずそう呟いていた。


10日以上も返事をせず、しかもその間ろくに話もしなかった私に、祐樹は愛想を尽かしているかもしれない。


そこまでではなくても、プロポーズした事を後悔しているかもしれない。そう思ったから。

それならそれで、仕方のない事だけど。


「という事は……」

答えを促す祐樹の言葉を遮るように、


「ねえ、本当に私なんかでいいの?」

と私は言っていた。前に“疑い深い”と祐樹に言われたけど、答えを言う前に、どうしても確認しておきたいと思ったから。


「“私なんか”なんて言わないでください。俺は志穂さんがいいんです。志穂さんと、ずっと一緒に生きて行きたいんです」


頬を赤らめ、真剣な眼差しで見つめる祐樹に、私は胸をキューっと締め付けられた。

体中が熱を帯びて、燃えてしまうんじゃないかと思った。


「私も、ずっと祐樹の側にいたい」


「じゃあ、志穂さんの答えは……」


「イエスよ」