【完】そばにいるだけで




「じゃ、じゃあ、あそこにしよ!」



苦し紛れに、視界に入っていた目の前のカフェを指差した。



桐生くんは動揺しているわたしとは正反対の穏やかな顔で、うん、とうなずいた。



はあぁぁ。



思わず大きく深呼吸してしまった。



自分で決めるのって、大変。



デートって、男の人がリードしてくれるものだとばかり思っていたから、まさか自分が主導権を握ることになるなんて、思ってもみなかった。