しばらく、毎度の沈黙が流れた。 そして。 「どうして、わたしなの?」 わたしは、地面に目を落としたまま静かに尋ねた。 すると、彼は本を閉じ、わたしを見つめた。 「草壁さんなら、僕のこと、わかってくれるかな、と思ったから」 わたしは首を傾げた。 「どうして?」 すると彼は、大きく息を吐いた。 「少し前、屋上で友だちと話しているの、聞いてしまったんだ」 そう言って、空を見上げた。