しばらく抱き合ったあと、わたしは我に返ってはっと顔を上げた。 無我夢中で走ってきて、自分がどこにいるのかがわかっていなかった。 そこは、中庭のど真ん中だった。 はっと、周囲を見渡すと、痛いほどたくさんの視線を感じた。 わたしはとっさにその場から逃げ去ってしまった。 桐生くんをその場に残して。