「じゃ、撮るよ」 わたしは本心を見破られまいと、メガネ越しにカメラのレンズを二人に向けた。 こんなに近くにいるのに、レンズ二枚挟んだ距離が、わたしと桐生くんの距離なんだと思った。 遠い。 少し震えた手でシャッターを押した。 わたしは撮れた写真を確認したくなくて、桐生くんに半ば無理矢理カメラを返してしまった。