「じゃあね」



デートの帰り、わたしが電車から降りようとしたとき、桐生くんはつないでいた手をぎゅっと引き寄せて、一瞬触れるか触れないかくらいのキスをわたしの頬にした。



はっと、顔を上げたときには、桐生くんの手は解かれていて、笑みを浮かべた彼を閉まりかけた電車のドア越しに眺めた。



桐生くんを乗せた電車は、ゆっくりとホームから去っていく。



わたしは、それを激しい心音とともにじっと見つめた。



頬にはまだ桐生くんのくちびるの感触が残っていて、体が妙にほてる。



わたしは両手で頬を包み、いつもより少し早足で改札を出た。