演芸場から路地に降り立つと、ひんやりとした空気が頬に触れた。 風冴える土曜の午後の街は、カップルや家族連れで賑わっている。 Pコートに身を包んだわたしは、桐生くんの隣りを歩いていた。 「どうだった?」 桐生くんは、嬉しそうにわたしを見つめる。 「初めてだったけど、けっこう楽しめた」 「よかった」 桐生くんはほっとした様子で、やわらかく微笑んだ。