わたしは言葉が出なくなってしまった。 目がきょろきょろと泳いでしまう。 その時、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。 桐生くんは本を閉じ、静かに立ち上がると、何事もなかったかのように、 「行こうか」 と言った。 だけど、わたしが、うん、とうなずくのも、ついて来るのも確認せず、すたすたと歩いて行ってしまった。