その日の授業はまったく身に入らなかった。 桐生くんの背中を見つめては、うつむいての繰り返し。 どうしよう。 どうすればいいんだろう。 だけど。 桐生くんに何も聞かれていないのに、自分から説明するのって、どうなのかな。 だって、ひょっとしたら、さっきのやり取り、聞こえてなかったかもしれないじゃない。 そうだよ。 普通にしているのがいい。 それがいい。 だってわたしは、桐生くんを裏切るようなことはしていないもの。 していない、よね。