ある土曜日の夕暮れ。



秋から冬へと季節はめぐり、街はクリスマスの装いになっていた。



これからますます寒い冬に向かっていくのに、街の人も雰囲気も、どこか浮ついているように感じる。



それはきっと、この赤と緑の装飾のせいなのかもしれない。



家族としか過ごしたことのなかったクリスマスが目前に迫っているにも関わらず、わたしの心には鉛色の雲がかかっていた。



桐生くんと駅で別れて、とぼとぼと駅前通りを歩いた。



今日もやっぱり、穏やかで優しいだけの桐生くんだった。



手をつなぐ素振りもなく、自分からリードすることもなく、ただ、わたしの言うことを、うんうん、とうなずいて聞いてくれるだけ。