風薫る




やっぱり、誘ってよかったかも。


「じゃ……行くよっ!」


先ずは俺から仕掛けた。

彼女はそれからも仕掛けようとはせず、俺が押しているように見えた。

この時はまだ、彼女が息切れしていなかった事に気付かなかったんだ。


木と木がぶつかる音がしたと同時に、俺の手に衝撃が走った。

痛い訳じゃない。

痺れている。


見れば、俺の木の棒は飛ばされていた。

更に、俺の首には彼女の棒が向けられている。

完全に、負けだった。


「私の勝ちよ」


彼女は俺に怪我をさせる事もなく、棒を捨てて背を向ける。

思わず地面に尻餅を付いた。


「え……」


ドサッという音に振り返った彼女は、驚いた表情で俺を見る。

直ぐに駆け寄り、ずいっと顔を近付けた。


「どこか痛い!?」


わ、近い……。

顔が熱を持っていくのが分かる。

彼女の目は、温かい色をしていた。