江戸で小さな道場を営む家に生まれた俺は、十一歳で京に上った。
実家の道場の免許皆伝になった後に父上が亡くなり、働く為に京の親戚に引き取られた。
親戚の宿屋に住み込みで手伝いをして、毎日を過ごしてきた。
そして休みの日、俺は散歩に出掛ける。
そこで町の人が近付かない桜の木がある場所へ向かい、俺は一人の女の子を見付けた。
その子は、食い入るように桜を見つめていた。
歳は……十歳、ぐらいだろうか。
俺の視線に気付いたのか、女の子は冷たい目でこっちを見る。
どうしてそんなに冷たい目をしているのか、よく分からなかった。
ただ、吸い込まれるような気がした。
女の子は何を言うでもなく、俺を一瞥して歩き出す。
こっちへ向かってくるかと思えば、横を通り抜けた。
行ってしまう――


