【短編涼話】 十物語

由宇の言葉の意味が分からない。

涙の訳も。

荒くなる息で由宇に一歩近づく。

「あなたは、あたしの初恋の人を殺した。・・誰も、彼が存在してたことを覚えてなくて、あたしはおかしくなったんだって言われたわ。だけど、あたしは彼が生きてたって信じてた。ずっと忘れられなくて、桜の神様にすがったの。真実を知ったとき、心底悔しかったわ。・・あなたが、彼を殺したんだって。あなたは罪も忘れて生きてたの?幸せだったの!」

こんなに激しい由宇を、僕は見たことがなかった。

「・・あなたはいつだって、人の心を弄んで笑ってた・・。そうでしょう?」

由宇は刀を構えて、もう一度僕を見つめた。

「何で泣くんだよ、由宇。」