【短編涼話】 十物語

僕は長い夢を見ていたのだろうか。

東京の自宅で目が覚めたとき、僕は妙な違和感を感じていた。

階下に降りると、いつものように両親がいて、婆ちゃんが味噌汁をよそっていた。

「おはよう、翔。・・元気ないわね、どうかしたの?」

母の心配そうな顔に「何でもないよ」と笑顔で返す。

「もうすぐ中学受験か?あまり根つめるんじゃないぞ?」

「大丈夫だよ。婆ちゃんの味噌汁で健康管理ばっちりだし。」

婆ちゃんが優しく笑う。

僕は幸せだった。

それが捻じ曲げられた世界だったなんて、考えもしなかった。

鬼に、もう一度出会うまで。