【短編涼話】 十物語

『ならば。そこの婆の正気と、両親だけ生き返らすというのはどうだ?十年後までにお前が一人よこすなら、両親とお前の幸せな生活を約束してやるぞ。』

僕の震えがかすかに止まった。

両親との、幸せな生活?

胸の奥でかすかな痛みが蠢いている。

鬼はすっと右手を差し出した。

『そうだ。借金も離婚もなかったことにして、お前が暮らしていたあの家で、四人で暮らせるようにしてやる。ただし、この術はかなり消費するのでな。新しい命がどうしても必要なんだが。』

錆びた臭いの中、次第に見慣れてきた赤い部屋を見渡した。

親切だった叔母夫婦、意外にも僕を思っていてくれた従兄弟。

僕は・・鬼の右手から、二つの魂を受け取った。