【短編涼話】 十物語

「お父さん!!」

ドサンと僕の前に父の変わり果てた姿が投げ出された。

「お父さん・・お母さん!!」

近くには母がいた。

僕はがたがた震えながら鬼を睨み付けた。

「お前、何をしたっ!」

『何を?・・フッ、ハハ・・お前が心の中で願っていたことを叶えてやったまでだ。・・実に愚かなものだな、人間とは。自分たちの都合しか考えていなかった癖に、ちょいとお前が事故にあったって言ってやれば、こんな風に飛んでくる。こいつら全員、馬鹿なやつらだな。』

空虚になった従兄弟の体を突付いてみせる。

僕は訳のわからない感情で小刻みに震えた。

僕が事故?そんな陳腐に嘘にだまされたっていうのか?

養育を押し付けてた親が?

偽善ぶってた叔母夫婦が?

僕をずっと無視してた従兄弟が?