【短編涼話】 十物語

「―――――ッ!!!」

僕は見えないものに躓いて転んだ。

立ち上がろうとして、何かにすべる。

生暖かい、生臭い、何の・・・。

カッ!

雷光が僕に見せたものは。

「う・・・あ、あっ・・うわぁあっ?!」

赤い箱。

10畳の居間は、おびただしい血で染まり赤い箱と化していた。

僕の両手に、下半身に、誰のものかわからない血がついている。

そう、誰のかわからない・・なぜならここには叔母夫婦と従兄弟が転がっていたから。

「なっ、なっ?!」

『―なぜ?愚問だな。』

ご、くんと唾を飲み込み、そっと振り返る。

真新しい血を零しながら、心臓を取り出した鬼がニィと哂った。