【短編涼話】 十物語

僕は足早に校門を飛び出した。

振り返ってはいけないと、僕の六感が警告する。

濃くなる禍々しさは学校という枠を超え、じわりじわりと僕の後ろへ迫っている気がした。

いつの間にか空は暗くなり、今にも雨粒をボタボタと零しそうだ。

案の定、玄関をくぐると同時にどしゃぶりとなった。

真昼なのに暗い部屋の中、手探りでスイッチを探した。

カチン・・・カチン、カチン・・

「停電?」

窓の外にいくつもの雷光が走った。

シィンと人気のない家の中、僕はばぁちゃんを探した。

離れにはいない。

普段は近づかない母屋。

この時間、叔母の家族はみな出ているはず。

そっと居間のふすまをひいた。