【短編涼話】 十物語

『閉じ込めた奴等が憎いか?』

壊れた鍵を放りながら、僕は「別に」と答えた。

『じゃあ、自分を捨ててこんな田舎に一人転校させた親が憎いか?』

僕は首を振った。

『知ったかぶりの今の家族が嫌か?』

「うるさい。」

僕は体を震わせながら家路に向かった。

『・・いい色だ。憎悪と悪意が生まれようとしている藍色の魂。喰ったら旨いだろうな。』

ゾクンッと悪寒が走った。

鬼の目が、僕の胸にツイと移動した。

「約束したはずだ!僕に障るな!」

迂闊にも声が震えてしまった。

コワイ、コワイ、コワイ!

『・・助けて。人間とは素直な生き物だな。・・浅ましく愚かで、何より己が一番。お前の心の願い確かに受け取ったぞ。』