【短編涼話】 十物語

ザワリ。

突然感じた嫌な気配に身構えた。

さっきより下がった室温が体を震わせ、いや、違う・・何だか嫌な感じがして歯の奥がカタカタ鳴った。

恐る恐る辺りを見回した僕はビクンと痙攣し、息を飲んだ。

何だ、光ってる、コイツ何だ?

僕はマットの上にいた者に驚愕した。

―――鬼!

躊躇いなくそう呼べる姿。

不揃いに伸びた銀の髪に冷ややかな銀の眼、白すぎる肌に対して嘲笑うように歪んだ真っ赤な口。

そして、頭部に生えた銀の角・・・僕は恐怖に悲鳴すら上がらなかった。