【短編涼話】 十物語

-----十年前


サワサワサワ

夜の体育倉庫。

僕は寒さに耐えられずマットの中に潜った。

使い古した臭いも、ふきっさらしの夜風に比べれば幾分かマシだ。

どこにでもいるいじめっ子。

そんな奴の為に泣きはしないけど、腹はたっていた。

転校生が気に入らない。

それだけで事あるごとに嫌がらせをしてくる。

今までは我慢していたが、いい加減頭にきた。

昇りつめたのか、天窓から見えなくなった月。

閉じ込められてどれくらい経っただろう。

自分を捜し回る婆ちゃんを思い浮かべると胸が痛んだ。