知ったような口振りに、俺は目を見開く。

一瞬、全てを知っているのかと思った。


「そんな目をしているのよ」


まぁ、知っている筈はないのだが。

俺は、一度目を伏せて桜を見上げた。


「なぁ。あんたは、俺が恨まれるのは当然だと思うか?」


気が付けば、そんな事を口走っていた。

だが女は驚きもせず、同じように桜を見上げる。


「何で恨まれるのかは知らないけど、おかしいと思うわ」

「……何で、そう言えるんだ」


俺自身、何を聞きたいのか分からない。

でも今は、この女に答えて欲しかった。


「すごく真っ直ぐな目をしているから」


自信満々に答えた女は、桜から俺に視線をずらした。


「私は会津藩士の水城 凜。あんた、名前は?」

「………氷上、諒」


凜は成る程ねと呟くと、桜に手を当てる。


「氷上は正しいと思うわよ。悪は滅するのみ」