忍の家系に生まれた俺は、小さい頃から忍術を習わされていた。
それと並行して剣術も習った。
今日も神道無念流の道場を歩いていると、ひそひそと噂話が聞こえる。
『最低な一族』
『汚れた血』
氷上家はそう言われる。
その根源は、俺の父上だ。
父上は去年の冬、幕府の家臣を殺した。
気が狂ったとかそう言うのではなく、幕府から配下の忍の家系である氷上の頭首……父上に直々に下った命だったのだ。
殺された家臣は攘夷志士に情報を流していた裏切り者で、だから暗殺の命が下ったんだ。
なのに、そいつは表面上は優しくて。
町人にも好かれていたから……氷上は、嫌われている。
………とんだ迷惑な話だ。
父上はただ、命に従っただけ。
悪を殺して、何故疎まれなければならないんだ。
そんな思いが胸に広がり、俺は稽古に力が入り過ぎた。